はじめに

住居や職場、ホテルや施設などの公共の場に盗聴器やボイスレコーダーなどの録音機を仕掛けて他者の会話をこっそり聴くことは、倫理的に問題があると、ほとんどの人が思うでしょう。しかし、法的には違法行為にはならないケースもあります。

盗聴・盗撮調査サービスをご利用のお客様は、盗聴・盗撮の被害に遭われている方や被害に遭わないために調査を依頼されるので、中にはご自身で調べてご存じの方もいらっしゃいますが、違法行為にあたらないケースもあることを説明すると驚かれる方も多々います。

それだけにどういったケースで違法となるのか、自分自身で知っておくことも盗聴の防衛対策として重要です。

なお、当記事は、一般的な法律に基づいて説明しています(2020年8月時点)。
法改正などにより、現行の法律と掲載内容に相違がある場合もございますので、具体的な法律に関するご相談は弁護士や法律事務所へお願いいたします。弊社では、法律に関するご相談は承っておりませんので、あらかじめご了承ください。

盗聴をしても犯罪にならない?

前述の通り、日本では盗聴が必ずしも違法行為となるわけではありません。盗聴器の製造・販売・購入・設置、盗聴波の傍受のみでは罪にならないことがあります。

「盗聴」という言い方をすると悪いことを想像する人が多いかと思いますが、使用する機器は音を拾って(マイク)、音を聞く(スピーカー)という物なので、仕組みとしては一般的に販売され、日常的に使用されている物と変わりません。

例えば、包丁は料理をする際に非常に便利な道具となりますが、殺人に利用されることもあります。だからといって刃物全般を規制するわけにはいかないのと似た性質のものでしょうか。

また、盗聴は犯罪を未然に防ぐ際の手段として、また証拠保全として利用されることもあります。これらを一様に規制してしまうと別の観点から問題が発生する可能性があり、立場によって考え方が変わるため、「盗聴」の違法性については、しばしば議論になることがあります。

盗聴が犯罪になるケースとは?

盗聴が犯罪行為に該当するケースについて、いくつかのパターンに分けて解説します。

【3-1】盗聴器などの設置・回収時に建物などへ侵入した場合

盗聴器や盗撮用のカメラを設置するには、建物内に入らなければなりません。無断で立ち入れば、当然、罪になりますが、立ち入りの許可を得ていても、盗聴器などを設置することで罪に該当する可能性があります。

立ち入りの目的が盗聴器の設置である場合、通常、許可しないからです。居住者や管理者が立ち入りを許可しないであろう、盗聴・盗撮、窃盗などを目的とした場合、許可を得ていてもこの限りではありません。

【刑法第130条 住居侵入罪(邸宅侵入罪、建造物侵入罪)】
・3年以下の懲役または10万円以下の罰金

【3-2】盗聴器などの設置のために他人の物を加工・損壊した場合

盗聴器や盗撮用カメラを設置する際、壁やコンセントに穴を開けたり、ケーブルを切ったりして加工すると、他人の物を無断で損壊したとして罪になります。

【刑法第261条 器物損壊罪】
・3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料

【3-3】電話や通信回線を盗聴した場合

日本では、前述の通り、盗聴行為を直接罰する法律はありませんが、信書・電話・電信・電子メールなどの通信の内容は、様々な法律で保護されています。盗聴行為の中で、これらの法律に抵触すると罪に該当します。

  • 日本国憲法(第21条)

憲法第21条第2項後段は、「通信の秘密」と呼ばれ、通信の内容を保護することを定めています。

  • 有線電気通信法(第9条・第14条)

有線の電話機などを盗聴した場合に罰せられる可能性があります。
(2年以下の懲役または50万円以下の罰金)

  • 電波法(第59条・第109条)

携帯電話を含む無線通信を傍受して知り得た情報を漏洩、盗用などを行った際に罰せられる可能性があります。
(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)

  • 電気通信事業法(第4条、第179条)

主に電気通信事業者に対する法律ですが、「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない」と定め、これらの秘密を侵すと罰せられる可能性があります。特に電気通信事業に従事する者が違反すると更に重い罰則が設けられています。
(2年以下の懲役または100万円以下の罰金)

【3-4】監視アプリで盗聴・盗撮を行った場合

他人のスマートフォンに監視アプリ(スパイアプリ)を無断でインストールすることは状況的に簡単にできるものではありませんが、逮捕者まで出ているので携帯電話の管理には注意が必要です。

監視アプリをインストールされると様々な機能を遠隔操作で利用されてしまいます。具体的には位置情報で場所を確認されたり、音声を録音したり、写真を撮られたり、メールをチェックされたり…プライバシーが丸裸にされると言っても過言ではありません。

過去には知人女性のスマートフォンに「ケルベロス」という有名な監視アプリを無断でインストールして位置情報などを取得し、逮捕された男性がいます。

【参考リンク】(2018.09.14 / exciteニュース)
28歳の男、知人女性のスマホにアプリを無断設定し逮捕 その恐ろしい機能とは

上記リンクの事案は「不正指令電磁的記録供用罪」として逮捕されました。これを簡単に説明すると、不正な指令を与えるプログラムに感染させ実行した罪に問われているということになります。

通常、この罪はマルウェア(ウイルス)を感染・実行した際に適用されるものですが、アプリでも使い方によっては不正な指令を与える電磁的記録に該当すると判断され逮捕されています。

このようなアプリは防犯などを目的として販売・流布されているので、規制できるものではありません(盗聴器と同じ)。また、家族でも無断でインストールを行い、遠隔操作を行うと犯罪に当たる可能性がありますので、ご注意ください。

【刑法第168条の2第2項 不正指令電磁的記録供用罪】
・3年以下の懲役または50万円以下の罰金

※監視アプリに不安を感じたら、必要なデータのみバックアップを保存し、スマートフォンの初期化を行ってください。利用するアプリを再度インストールする場合は、1つ1つ実行することをお勧めいたします。

【3-5】盗聴した情報を用いて脅迫・ストーカー行為・誹謗中傷などを行った場合

    1. 脅迫・強要・恐喝
    2. 盗聴にて得た情報をもとに相手を脅したり、強制したりすると、「脅迫罪」や「強要罪」に該当する可能性があります。
      また、金品を要求すると「恐喝罪」になり、いずれかの犯罪に当たる可能性があります。

      【刑法第222条 脅迫罪】
      ・2年以下の懲役または30万円以下の罰金

      【刑法第223条 強要罪】
      ・3年以下の懲役

      【刑法第249条 恐喝罪】
      ・10年以下の懲役


    3. ストーカー行為(つきまといなど)
    4. 盗聴で行先や所在地を確認して、つきまといや待ち伏せなどを繰り返し行うとストーカー行為とみなされ「ストーカー規制法(正式名称:ストーカー行為等の規制等に関する法律)」に抵触する可能性があります。

      【ストーカー規制法第18条】
      ・1年以下の懲役または100万円以下の罰金


    5. プライバシーの侵害・誹謗中傷
    6. 盗聴にて知り得た公開されていない情報を公開するとプライバシーの侵害に該当することがあります。
      プライバシーの侵害には刑法上の刑事罰は存在しませんが、民事にて損害賠償請求をされることがあり、また、その情報が事実であってもなくても関係なく処罰の対象となる「名誉毀損罪」に該当することもあります。誹謗中傷についても同様の罪に該当する可能性があります。

      【刑法第230条 名誉毀損罪】
      ・3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金

盗聴は民事上の損害賠償の対象になり得る

盗聴行為は前述の通り何かしらの刑事事件に該当する可能性があるので、警察の捜査にて犯人が特定できた場合は、民事裁判を起こして損害賠償請求を行うこともできます(民法第709条 不法行為による損害賠償)。ただし、証拠が不十分であると被害届を受理されないケースなどもあり、犯人の特定に至らないこともあります。

また、離婚を前提とした夫婦間のトラブルで盗聴された場合など、警察は民事不介入のため、刑事事件にはなりませんが、民事事件として相手側に損害賠償を請求することもできます。犯罪には該当しないことや家族間という心理的なハードルが低いからといって正当な理由もなく盗聴をするのはやめましょう。

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本章で掲載している内容は一般的な法律の説明になります(2020年8月時点)。

弊社では法律に関する具体的な内容のご相談は承っておりませんので、弁護士や法律事務所へご相談いただきますようお願いいたします。

実際に盗聴器などが発見された場合、お客様の対応は様々です。警察へ被害届を出される方や、盗聴は身内の犯行が多いため、警察へは連絡せずにお客様ご自身で処理される方もいます。弊社の調査で発見された場合は、警察へ連絡した際の立ち会いなど、お客様のご要望に沿ってできる限りの対応をさせていただきます。

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